一体何が理由で脳の異常が起こっているのか。
MRIだけではわからないし、脳髄液の検査も陰性だった場合は別の原因を調べなければならない。
そんなわけで、ほぼ確実に診断出来るすべは脳生検が最も有効なんだって。
でもあーた、
そう簡単に頭蓋骨に穴開けられますか??
痛いのが苦手なうちのぽかさんには手術などもってのほか。
到底無理な話で、なにかに付けて「脳生検、脳生検」と提案してくる主治医を人でなしと疑い、
憎悪と怒りを煮えたぎらせる毎日であった…。
で、帰ってきたぽか。
1月の末のこと。
疲労のためか熱にうなされ寝込んだ私を心配し、そしてこれはビッグチャンス到来!!
とばかりに「オイラはもう退院する!」と言って脱走してきてしまったぽかであった。
急に退院と言われても、こちらとしては嬉しいけど物凄く心配だ。
一日ゆっくり休めたので熱も少し引いてきたし駅まで迎えに行こうと思い連絡すると
「もうタクシー乗ったん♪もうすぐ家につくよ〜」とご機嫌なぽかさん。
そして久しぶりの感動の再会を果たし、いつも通りお茶を飲みながら、
あーじゃねこーじゃねと会話をする。
「まったくあの医者は!オイラのどたまに穴開けようなんて、どういう育ち方をしているんだ」
相変わらず暴言を吐きまくる君こそどういう育ち方をしているんだと思いながら、そんなことを言おうものなら「じゃぁ、あーたが代わりに頭かち割ってきなさいよ」と言われるのがオチなので黙っておく。
脳生検…きっとした方が良いんだろうけど、しないで済む方法もあるんじゃないかな。
MRIでなんとかわからないものかな?先日の脳髄液の検査で診断が付くと良いんだけど。
あまりにも大切な人過ぎて、最悪の事態を想定したくないというのが本音。
うちの奥さんは強運の持ち主だ、これまで何度もかなりやばいピンチを一緒に乗り越えてきた。
これからは多少のハンディキャップを負って生きていかなくてはいけないかも知れないけど、
ずっと守るから大丈夫、じーばーになってもずっと仲良しで一緒に生きていくと約束したんだからさ。
そんなこと言ってくるのは想定済み
今から6年前の2018年。
オイラが白血病で入院し、移植しても予後が悪く1年の命と当時の医師に言われた時、
「まだパパを死なせない!まだまだこき使うんだから」と、どうにか助けてくれそうな病院を片っ端から探してくれた。
子ども達が学校で困った状況に陥った時、授業中であろうと乗り込む勢いで(実際乗り込んだヤバイママ)何としても解決するべく全力で守った。
いつだって夫と子ども達のことを一番に考え、強く優しく生きてきた妻。
そんな君だからこそ、弱くなる時はとことん弱くなることを俺は知っている。
だから、どうせこんなことを言ってくるだろうなんてことは想定済みだよ。
本気度ゼロパーセントの発言。まったくもって話にならない。
離婚すれば脳が正常に戻るというのならすぐにでもするけど。お前は必ず治るんだから心配するな。
とにかく、まずは検査の結果を待とうじゃないか。
しばらく行けていなかったカフェやパスタのお店を楽しむ。
今年に入ってから二人でゆっくりする時間なんてあんまし無かったよね。
子ども達ももうすぐ卒業だ、早いもので高校生と中学生になるんだよ。
やっと夫婦二人、時間も増えてのんびり過ごせるようになるね。
そんなわけで2月の上旬は楽しく元気に過ごすことが出来た。
オイラのバースデーも祝ってくれた。
このままぽかには自宅でゆっくり過ごしてもらって、脳髄液の検査結果次第でこの先を考えようと。
そう考えていた。
しかし病院脱走事件から1週間も経過すると、階段昇降が困難になる、リビングでの転倒、ベッドから起き上がれないなど…。
日常生活が困難になるほどに、いつものぽかではなくなってきてしまった。
声にも全く覇気がなく、基本的にポ〜っとしている状態。
そして、ヘラヘラと力なく笑っている。
とくに夜寝る時にベッドに乗れない、朝起きてもベッドから降りられずヘラヘラ笑っている。
ある朝に至っては、なんとか起きたものの犬のサークルに突っ込んでしまいそのまま力が入らず立ち上がれなくなってしまった。
それをどうにか助けようとする娘であったが、小学生の力ではママを起こすことも出来ない。
ぽかはヘラヘラと笑いながら「パパには言わないで〜」と娘に言ったらしいのだが
パパ〜!もうママをなんとかして〜!!
という叫び声が寝室から聞こえてきた。
短期間でここまでのレベルになってしまっては「これ以上自宅にいると大変なことになる」と判断し、
「これから病院に戻ろう。そして出来るだけ早くに脳生検をしてもらおう。」と妻に伝え病院に戻ることとなった。
週末の土曜日ではあったが、運良く土曜診療の日だったためMRIやレントゲン撮影を行うことが出来た。1月末と比較して脳の画像に大きな変化は無かったが緊急性が非常に高いため、当日入院となった。
車椅子に座り、看護師さんと一緒に入院病棟へと向かうぽかを見送り決意する。
ここからは家族全員力を合わせるところ。
どう考えてもただ事ではない状態だけど、どうか大きな病気ではありませんように。
【余談】
その昔、二人で車で移動中。
オイラの何気ない発言が相当頭に来たらしく一切口を利かずにずっとスマホをポチポチしていたことがあった。
そんなことは日常茶飯事なので話しの内容は全く覚えていないが、長時間車内に沈黙が続くのもアレだし、とにかく何かメチャクチャ怒っているのでここは一つ機嫌を取ろうと思い、
「ねぇねぇ☺️なにプリプリしてるの?何か調べてるん?」と聞くと
……そう言われたことを思い出した…。
あのときの発言は本気度100%だったのは言うまでもない。