「早う天に召されたい。」
「もういいからさっさと召してくれ!」
「なんなら自分で召しましょか?」
そう思うことなど日常茶飯事だ。そんな勇気もないくせに。
いつからか我が家は24時間366日営業の飲茶の店になってしまい、頼んでもないのに次から次へと激辛&激しょっぱい悲しみの飲茶が運ばれてくるようになってしまった。
「もうお腹いっぱい、いらないよー」
そんなツライ日々に一瞬、終止符を打ちそうになったのに、なぜか横浜の赤レンガ倉庫でご機嫌のウッキウキになって最後はIKEAで子どもたちのベッドまで買って帰ってきたムチャクチャな1日のお話です。
事の始まりはポンポン痛い!
今年の夏休みは息子のたれ吉も娘のぴょろ子も、部活に遊びに(勉強…は?)忙しい日々を送り、まさに毎日がエブリデイ!だった。
ホント毎日のように学校か友だちと遊びにでかけていたのではないだろうか。
そんな夏休みが間もなく終わる8月下旬…ぴょろ子が朝からお腹が痛いと言い出したので、とりあえず部活を休ませることにした。
今年の夏はオイラの住む地域では風邪だけにとどまらず、あちこちで何かと流行っているという情報も入っていたので「こりゃ変な菌でも拾ったかな?」なんて思っていたのだが
昼過ぎにはケロッとした顔で、いや何ならご機嫌な顔でリビングにやってきた。
「具合はどう?」と尋ねるともう元気になってお腹が空いたと言い出した。
冷蔵庫からオイラが作っておいたおかずなど、あれこれ取り出して
おいおいめっちゃ食べてる…ね。
からの…まさかのスクールエスケイプ
お腹が痛いと言っていたし、実際に朝は体調も悪かった様なのだが部活を休むことが決まってからのご機嫌&大食いのテンション。
「これはもしや?」と違和感を覚えた。
翌日もそのまた翌日も部活の予定があったのだが、予想通りまた朝からお腹が痛いと言い出した。
そして昼頃にはケロッとした顔で楽しそうに過ごしている…。
「これは完全に部活が嫌になっている…」
そうこうしているうちに始業式の日がやってきてしまった。
休みボケか普段より少しだけ遅れたものの、久しぶりに制服を着てそれなりに元気に「行ってきまーす」と出ていったぴょろ子。
5分程すると急に玄関のドアが開いたので、なんだろう?と見に行くと、そこには無言で立っているぴょろ子がいた。
「どうしたの?忘れ物?」
と尋ねるも死んだ貝のように口を閉ざし無言で玄関に立っている。
ようやく口を開いたかと思えば「学校に遅れそうだから送っていって」と言うので学校の近くまで車で送って行くも、まったく車から降りようとせず理由を聞くと涙をポロッと流して小声で一言。
学校行きたくない…
のおぉぉぉぉぉ!!!
死別後、MAX恐れていた状況が早くもやってきてしもーただよ。
おーい奥さん!ちょっと聞きましたか?今の言葉!!
【スクールエスケイパーここに現る】ですよ。
とりあえず話を聞かなくては、と言うことでひとまず帰宅。
「どうしたの?なんで行きたくなくなっちゃったん?」と一度だけ聞いて
あとはひたすら「話すのを待つ」、「話を聞く」のスタンスに徹することにした。
思いの外、すぐに理由を話してくれたぴょろ子であったが、やれ友達と最近距離ができてしまったやら、部活にちょっと苦手な子がいるなどの理由を並べてきたが、学校に行きたくないメインの理由は部活が大変すぎて辞めたいということだった。
子を救いたい気持ち・自分への諦めの気持ち
多くの家庭では、そんな娘をどうにかして救ってあげたい!なんとしても助けてあげなければ!守ってあげなければ!と思うものであろう。
しかし心がだいぶ弱っているオイラにとってこの状況は、「やっぱりママがいないとダメか」と所詮シンパパに出来ることなど限られているのだと言うことを思い知らされ、余計に気持ちに影を落とす結果になってしまう。
「救ってあげなければ」という気持ちと「もうどうでもイイや」という諦めの気持ちがないまぜになったものとなってしまった。
当然、子どもたちは2人ともオイラとぽかの愛する、そしてぽかちゃんが命を懸けてお腹を切ってまで産んでくれた大切な命なので困っていることがあれば何が何でも助けたい。
だけど今のオイラはそんなに強くはない…。
ほんの少しだけのヤバイ覚悟
すっかり自分だけの狭い狭い殻に籠もってしまったぴょろ子。
本人からしてみれば学校生活が今過ごしている世界なのでものすごく大きな悩みであることには変わらない。
けれども誰かに意地悪をされているわけでもなく、仲良くしてくれる友達にも恵まれている中で、いま自分がどれだけさほど大したことではないことに悩んでいるのかを知ってほしくて、大きな海でも見せたらどうだろうかと考えた。
ビーチも良いけどせっかくならこの日本という島の突端にでも連れて行こうかと思い、少し距離はあるが千葉県最南端の海の見える岬に行くことにした。
海が見える岬を選んだ時点で「え?なぜ岬?」と思われるかもしれないがこの日のオイラの心はだいぶ壊れていて、ほんの3〜5%ほど場合によってはダイブしてやろうと考えていたのだ。
「諦めの気持ち」がわずかに含まれているとちょっと怖い行動に出てしまう可能性があるという例かもしれない。
何にせよ、オイラ自身もずっと殻に閉じこもってしまっていたのであろう。
自分の小ささを知るべく自然の大きさを感じたいと思ったのかもしれない。
たれ吉はずっと行こうかどうしようか悩んでいたが、夏休みの課題が残っているということでぴょろ子と犬を連れて出かけることにした。
もしぴょろ子が行かないと言っても一人で行くつもりだったが、そうすると海にダイブする可能性が高まると感じ、抑止力として犬2頭を連れて行こうと思っていた。
結局は「愛」が救ってくれた
アクアラインを目指し高速を走る車内、大好きなディズニーの曲を流し始めるぴょろ子。
段々ご機嫌になってきた所で「まぁ部活って大変だよね〜」と話をしてみた。
「パパも昔バスケやってたけど、強い学校でもないのにめちゃくちゃキツかったよ」
「強豪校だったら辞めちゃってたかもしれないけど、頑張って食らいついてたかもしれない」
「ぴょろ子は、自分で自分のやりたいことを決めて良いんだから、今が耐えられないのなら部活を変えたって良いんだよ?」
と言った所で「そうなの!?」と本人の表情と声色が急に明るくなった。
どうやら部活は一度入ったら何が何でも続けなければ行けないと思っていたらしく、
また父親から「なんとか頑張りなよ」と言われるかもと思っていたようだ。
ところがその父親が意外と軽い思考で「自分が想像したよりワクワク出来なくて困っているのなら、他の素敵にワクワクできそうな道を選ぶのもOK、もちろんこのまま頑張るのもOK!」という考えの持ち主だと知ってびっくりしたようだった。
どちらの選択肢を取っても振り返った時に何かを得られたと感じることは出来る。
でもどうせなら「あの時、こっちの道を選んだ私は正解!」と思える方が良いと思う。
ここ数日、我が家に纏わりついていたズーンとした重い空気が嘘のように消え、その瞬間にオイラの気持ちも一気に軽くなった。
その時、車は湾岸線を走っていてまもなく千葉方面に向かうアクアラインへの分岐に差し掛かるところだったのだが、急に「横浜の赤レンガ倉庫でお茶でもしよっか?」という気持ちに切り替わった。
娘も「行きたい!行きたい!」と喜んでくれた。
横浜の赤レンガ倉庫は、ぽかちゃんもお気に入りのスポット。
元気になったぴょろ子とオイラを見て嬉しくなって、岬なんかじゃなくて大好きな赤レンガに行きたいと念を送ってくれたのかもしれない。
2頭のアホ犬がおしゃれな横浜のムードを台無しにする
ルートを変更して、赤レンガ倉庫に到着すると一緒に連れてきたワンコが大はしゃぎ。
こんな広い場所楽しそうじゃないか!早く散歩をさせろ!と完全にマッドドッグと化してしまった2頭にリードを付け、さっそくお散歩をはじめたのだが、小心者のトイプーに反して、視界に入った人間・犬・鳥などのすべての生物を威嚇し始めるゲキヤバポメラニアン。
すれ違う人皆さんに「すみません、ごめんなさい」とお詫びをしながら赤レンガ倉庫周辺を散策する。
2024/8/31(土)小雨の降る昼過ぎに小粒なトイプーと狂った白いポメを見かけた方がいらっしゃったら、それはオイラとぴょろ子です。
ご機嫌が過ぎて、帰宅してから今度はIKEAに遊びに行き、たれ吉とぴょろ子の部屋用にベッドまで購入した。
さて、週明けは少し心が軽くなって元気に登校できるだろうか?
頑張れぴょろ子。
【余談-YODAN-】
ちなみに岬へ出かけることを思いついた際、一番初めに声をかけたのは息子のたれ吉。
「なぁ、みんなで岬に行かないか?」と誘ったのだが
は!?なぜに岬??
と驚かれ「俺は〜…いいや、まだ課題も残ってて終わらせたいし遠慮しておく」と断られてしまった。
その時のたれ吉は笑顔だったが目は全く笑っておらず、若干目が座っている父親の顔を見て身の危険を感じたかのもしれない。
そのセンサー、バッチリ機能してましたよ。
今日は本当に要らぬ心配をかけてしまっていたらごめんよたれ吉くん。